ファウルハーバーの公式
冪乗和
に関する一般的な公式について見ていきます。和はn-1までとなっていることに注意してください。
ベルヌーイ数 を
で定義する。
少し並べてみると
実はこの後も奇数番号では0となります。
#1 kが3以上の奇数のとき
と変形するとこれは偶関数であることが分かる。□
少し並べてみると
もし二項定理との見た目の類似から
と表記してしまうと
と書けます。
次に、は当然だがについても
#2 において
において係数比較すると
左辺はまさしくとなっている。□
#3 において
□
ちなみにこの性質はベルヌーイ数の性質から出てきたのではなく、どんな数列からでも同じような手法で多項式列を構成すればこの性質を持つことになります。
#4 において
#2より
□
次が導出のためのメインの公式となります。
#5 を滑らかな関数とする。このときで
が成り立つ。
帰納法で示す。の場合を書き下すと
これは部分積分から簡単に確認できる。
mで成立していると仮定する。#3と部分積分から
であるから
を確認すればよい。#1, #2によりmが奇数ならそのまま一致し、偶数なら両辺とも0であることが分かる。□
大雑把な捉え方としては、仮に最後の剰余項といえる項がで0に収束するとすると、
とすれば
となって、これはを計算するためにとなるを求めることに対応します。
#6 整数として
但しつまりの定義域をに制限してから周期1の関数となるように繰り返した関数とする。
に対して#5を適用し、総和をとることで得られる。□
ファウルハーバーの公式
のとき
#6 を として適用すると
#4より最後の項(剰余項)は消えて
□
もしまで足してかつ公式の形はそのままにしたいならとだけ変更する必要があります。
位相空間の公理が自然に感じられるためのストーリー(試作)
個人的に、こういう順序で辿って行けば位相空間の公理が受け入れやすくなるのでは、というストーリー(?)を描いていきます。
位相構造は集合のつながり具合を記述するらしいものでした。例として位相構造よりはずっと具体的に思える距離空間について考えてみます。ある集合に入れられた距離を試しにすべて2倍してみます。するとこれは異なる距離空間になりますが、空間のつながり具合としては同じに思えます。実際、距離空間の間の連続写像が論法によって定義されますが、ある写像が連続なら、定義域の方であれ値域の方であれ、距離を上記のように2倍してみたところで連続性はそのまま保たれることが容易に分かります。
またにはユークリッド距離の他にたとえばマンハッタン距離
がありますが、距離をユークリッド距離からマンハッタン距離に替えたところで、連続関数であったものがそうでなくなったり、逆に連続でなかった関数が連続になったりすることはありません。こうした例を見ると、集合のつながり具合を定めるような構造というのは、距離を定めることよりもずっと緩いのではないかと思えます。それはどんな構造でしょうか。
・・・
点列の収束というのは空間のつながり方によって定まるであろうことの中で比較的直観的なものです。ここでは試しに、位相空間の公理を忘れた上で、点列の収束の如何こそ集合のつながり方のすべてだ、と言ってみます。
定義 集合とその部分集合族で、を満たすものの組を近傍付き空間と呼ぶ。
部分集合族はほぼ何でもいいので部分集合付き空間と言ったほうがいいかもしれませんが雰囲気のための命名です。全体集合や空集合が入っているのは便宜上で本質的なことではありません。
定義 近傍付き空間と上の点列およびについて、がに収束するとは、任意のに対して自然数が存在して、ならばであることとし、と書く。
の元(近傍)がたくさんあるほど点列は収束しづらくなり、バラバラなイメージとなります。
こうして位相空間の公理を無視して、ひとまずある集合上につながり方の構造っぽいものを定義しました。この定義の拙いところはどこでしょうか。それは、このままではを台とする異なる二つの近傍の入れ方が全く同じ点列の収束を導き得るということです。
定義 集合を台とする二つの近傍付き空間,が点列同型であるとは、任意の上の点列,に対してであるかどうかが一致していることとする。
点列の収束如何こそつながり方のすべてだと言った以上成り立ってほしいけれど実際は成り立たないことは
「とが点列同型であるならば」
です。
たとえば
とすると二つは点列同型であることが容易に分かります。
よって目標は、近傍付き空間に何かしら制限(公理)を加えることによって「とが点列同型ならば」を成り立たせる、もしくは二つが点列同型かどうかを判定する方法を見つける、ということになります。
命題 近傍付き空間に対して
とするととは点列同型である。
容易に分かるように
に対して
とすればはすべて点列同型となります。
このように各点列の収束如何をそのまま保持する近傍を付け加えられるだけ付け加えたものがと言えます。その結果は位相空間の公理を満たしていて、 となります。
では「近傍付き空間とが点列同型ならば」というのは成り立つでしょうか。言い換えれば、「位相空間の公理を満たす近傍付き空間とが点列同型ならば」は成り立つでしょうか。もし成り立つなら、点列の収束如何から出発する位相の公理への導きは成功と言えそうです。
が、残念ながらこれは必ずしも成り立ちません。可算的には辿り着けないような深部において点列は無力です。
例 を、の有限部分集合全体に一点を付け加えたものとし、
とし、近傍付き空間を考える。更にとするととは点列同型だがとなる。
なぜなら任意の点列に対しては高々可算集合であるからであるが存在する。の近傍の存在によって、となるのはどちらの近傍付き空間にせよ有限個のを除いてとなる場合に限る。しかし明らかに。
しかし可算的な条件を加えれば成り立ちます。
命題 近傍付き空間が点列同型で位相の公理を満たし、さらに位相空間における第一可算公理を満たすとする。このときとなる。
証明 対偶を示す。と仮定すると対称性からだがとなるものが存在するとしてよい。するとが存在して、任意のに対して。特に、のにおける可算な基本近傍系をとすると各から点を適当にとり点列を作るととしてはであるがとしてはそうではない。□
提言「点列の収束の如何こそ集合のつながり方のすべてだ」を固持するなら近傍付き空間や位相空間の公理に第一可算公理のようなものを入れたほうが良さそうです。しかしむしろ、ある点への近づき方を可算性や直線的な構造に縛られた点列に限ったことの方を反省すべきではないでしょうか。連続濃度の整列集合で果てへ向かったり、無数の支流が絶えず合流しながら大海を目指すような近づき方もあります。
そうして点列を含む概念である有向点族に行き着きます。有向点族の定義は(有向点族 - Wikipedia)を参照してもらうとして、
定義 近傍付き空間と上の有向点族およびについて、がに収束するとは、任意のに対してが存在して、ならばであることとし、と書く。
定義 集合を台とする二つの近傍付き空間,が有向点族同型であるとは、任意の上の有向点族,に対してであるかどうかが一致していることとする。
とすると
命題 近傍付き空間に対してとは有向点族同型である。
命題 近傍付き空間が位相の公理を満たし、かつ有向点族同型ならば
証明 対偶を示す。と仮定すると対称性からだがとなるものが存在するとしてよい。するとが存在して、任意のに対して。
ところでは包含関係をと定義することによって自然に有向点族とみなせる。各に対しての点を適当にとっていくと、も自然に有向点族とみなせて、としてはであるがとしてはそうではない。□
このように点列の代わりに有向点族を考えることによって位相空間の公理をこれ以上増やさずに済みました。もやもやすることは尽きないですが、強引にめでたしめでたしとしておきます。
バーンサイドの補題
まずが推移的な作用である場合に示します。すなわち
群は軌道ごとに別々に作用していると考えても問題ないので、この場合がバーンサイドの補題の本質的な部分です。
証明
をの固定部分群として
□
なんだかよく分からないのでコトバでもう一度追っていきましょう。
各に対しての作用で不変なの元の数を集計する。しかしごとに集計するとその数はバラバラで数えるのが大変。なのでの元ごとに集計することにしてみる(二重和の交換)。すると、同じ軌道上では固定部分群の位数はどれも等しくであることから。全体で和をとればとなる。
これもコトバでもう一度(終わりの式から逆走します)。
各に対しての作用で不変なの元の数を集計する。の各軌道ごとに集計してから全軌道で足し合わせることにする。すると補題の補題から、各軌道についてはどれもとなる。だからもちろん、全軌道での和はである。
結局、証明はほとんど部分集計の手順を変えることしかしていませんね。ですがこの補題は回転させたり順序を変えたりして一致するものを同一視する場合の数え上げにおいて非常に便利な式であり、憶えておいて損はないでしょう。
ベルンシュタインの定理のイメージ優先証明
この定理の証明はイメージ的にはかなり素朴だと思うので、そちらを優先して冗長に説明してみます。
まず一般論から。
集合と単射があるとき上に、以下のような同値関係が入る。
非負整数が存在してまたは
この同値類の一つをとする。の定義域、値域を上に制限したものをとする。
このとき、きっちり証明を書こうとすると面倒くさいけれどイメージ的には明らかなことは
上の3つの型はそれぞれ、直線型、半直線型、円周型と呼べます。
定理のステートメントの集合に対してとすれば二つの単射は上の単射を自然に誘導するのでそれをとする。はの元をの元に、の元をの元にうつす。
このに対して上述の同値関係を考えて、写像をそれぞれの同値類に制限したものに分割する。するとそれぞれの同値類上での元とが一対一対応していることを示せば定理は証明されるが、これはどの型においてもとが交互に現れることから明らかである(円周型のは必ず偶数であることに注意)。
二項係数に関する交代和
を有理式とするときの
について考えてみる。まず多項式の場合から。
例.
とする。
第二種スターリング数とはを基底の線形和で表したときのの係数のことである。
二項展開
に直接もしくは回(但し未満)微分してからを代入することで、ならば
またにおいてもなのでやはり
では
以上から
なので
のとき、
□
有理式の部分分数分解を考えれば、後はについて計算すればよい。以下はでない複素数とする。
まずの場合
次にの場合
の両辺をの関数とみて微分すればよい。□
さらに大きな次数についても繰り返し微分していけば原理的には求まる。結果だけ書いておけば
但しは非負整数を動く。
さらにこれより
但しは非負整数を動く。
□
ちなみにの場合は
としてと極限をとれば、右辺はロピタルの定理などを用いれば計算できて
が分かる。
サイコロをあるパターンが出るまで投げ続ける
サイコロ振り続けるとき、目がの順に連続して出るまでにサイコロを何回振るか、その回数の期待値を一般的に求めよう。もっと直接的にも計算できるけれど、ここではマルチンゲールを利用してみる。
命題 として
たとえば1が6回連続して出るまでに振る回数の期待値はなのでであり、123456と連続して出るまでの期待値はなのでとなる。
先に用語、記号の説明とあとで証明する補題を列挙し、それらを使って証明する。
を、条件の出目順が出るまでにがでる回数の期待値とする。
補題1 として
は他のより計算しやすいというのがポイント
確率変数をn回目の目とし、フィルトレーションを
と定義する。
確率変数をn回目までに目iが出た回数とする。
を、条件を満たした時の回数を表す確率変数とする。明らかにこれはに関する停止時刻。
補題3
補題4
これはちょっと不思議な感じがする。
以下、各補題を証明する。
補題1 として
証明 確率変数を、サイコロを振り始めて最初にが出てからその「チャンス」が継続している間に出たの目の総数とする。但し「成功」した場合はとする。
例 , のとき
出目順が53124134...なら 53[12]4134 と括弧で括った中にある1の数を数えて
21121111なら2[1]121111で
12111213なら[1211]1213で
次に確率変数を、のカウントを終えたのち、そこから改めてサイコロを振り始めたと考えるときのに相当するものとする。も同様。するとは独立同分布であり、
□
証明 の適合性、可積分性は明らか。 残りの条件は
によって分かる。□
補題3
証明 に対して
であるから
□
補題4
対称群の正規部分群
対称群の非自明な正規部分群が交代群とでのクラインの四元群のみであることを乏しい知識で示してみます。
用いる知識は
群の部分群が正規部分群であることはがのいくつかの共役類の和集合として表されることと同値である。
対称群についてが同じ共役類に入ることは、両者が同じサイクル構造を持つことと同値である。
などです。
以下では正規部分群とは非自明なもののみを指すとします。
先に4次以下について簡単にみていきます。類等式の部分和での位数の約数となるものが正規部分群の候補になります。
1,2次の対称群はそもそも非自明な部分群が存在しない。
3次の対称群の類等式は 。1を含む部分和で6の非自明な約数になるのは のみ。これは交代群が対応する。
4次の対称群の類等式は
1を含む部分和で24の非自明な約数になるのはのみ。これはクラインの四元群と交代群が対応する。
メインに進みます。
かつならば 。